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東京オリンピックで進めよ 電柱地中化

2017年12月11日

海外の無電柱化率はロンドン、パリ、香港が100%、台北95%、シンガポール93%、ソウル46%、ジャカルタ35%などとなっている。

日本の無電柱化は、欧州はもとよりアジアからも大きく遅れをとっているのだ。

それどころか、NPO法人「電線のない街づくり支援ネットワーク」のホームページによれば、日本の電柱の総数は約3300万本もあり、年間約11万本のペースで増え続けている。

この数字を見ると、無電柱化推進法ができても、実際問題として無電柱化を一気に進めるのはかなり難しいだろう。

なぜこうなるのか?

国(および市民)が「街の景観」に無頓着だからである。

日本には世界で最も窮屈な建築基準法があるが、そのどこにも街の景観についての具体的な記述は出てこない(「景観地区」「準景観地区」などの用語はでてくるが)。

建築物の敷地、構造、設備、用途などについてはガチガチに決めているくせに、そもそも街の景観はどうあるべきか、何も書いてないのである。

だが、街の景観は、不動産の価値を決める最も重要な要素である。

たとえば、高級住宅街の代名詞である東京・田園調布の価値は、その景観がもたらしている。

多くの人が「こんな街に住んでみたい」と思うから不動産の価値が上がったのである。

しかし、その認識が国に欠如しているため、日本全国津々浦々まで電柱だらけ、電線だらけになっているのだ。

スイスのインターラーケンでは、どの家も窓辺にゼラニウムの花を飾っている。

あれは実は、観光地として絵になる景観を演出するため、窓辺にゼラニウムを飾らなければならないという決まりがあるのだ。

また、ギリシャのサントリーニ島は家々の白い壁と教会の青い屋根の美しいコントラストで有名だが、これも白と青にしなければならないと決まっているのだ。そして、そういうことを決めているのは、すべてその市町村、つまり地方自治体とその住民である。

無電柱化についてはコストの高さも指摘されている。

しかし、無電柱化すると決めたら、それは必要な投資であり、日本はその程度の投資ができない国ではないだろう。

すでに民間企業やNPOが様々なコスト低減策を提案している。電力会社や通信会社を含めて取り組めば、決して不可能なことではない。

そもそも無電柱化は街の景観を良くして不動産の価格を上げるのだから、これは立派な「成長戦略」だ。

アベノミクスでも「第3の矢」(民間投資を喚起する成長戦略)として策定した「日本再興戦略」の中に無電柱化の推進を盛り込んでいるが、その目的は「観光地の魅力向上等を図るため」となっている。

しかし、無電柱化の本来の目的は、その街に住んでいる人々の資産価値を上げることや安全や防災にある。

無電柱化を実現でいるか否かは、地方自治体が国任せにせず、責任感を持って自主的に取り組むかどうかで決まるだろう。


『武器としての経済学』大前 研一著(小学館)より 部分引用