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西村晃の路地を曲がれば、もう旅人

第11回 2月 春いまだ日本海

「東尋坊に行きたい」。
私がこう言うと、知人たちは怪訝な顔。
特別な意図があるのか、と言わんばかりだった。
日本海は冬が似合う。
この時期に断崖に立つのも一興、と思った。
もっとも冬に寒いところに行くのが好きかと問われると、下を向く。
「寒いから暖かいところへ派」と「寒いからこそ寒いところへ派」があるとすれば、軟弱な私は基本的に前者だ。
そんな私が今日はあえて思い立ち、寒さに挑む、などと言えば地元の人に大げさな、と笑われるかもしれない。

阪神地区から日帰り圏の福井。
名前が好きだ。特急サンダーバード。
大阪から2時間。
都会、湖、トンネル、そして雪。短時間で景色が駆ける。
金沢開業後を睨み、新幹線の高架橋は福井まで、駅ビルも刷新された。


新築福井駅ビルと高架橋

えちぜん鉄道の駅舎は、その裏にこじんまりとある。
切符にハンコを押す駅員に東尋坊へのバス接続を尋ねると、丁寧な説明時刻表も添えてくれる。
白い田畑の中を走ること40分。
一両編成が三国駅に滑り込むと、東尋坊行きのバスがリレーする。
日帰り客にありがたいのは、この接続のよさだ。
東尋坊から「あわら湯のまち」駅でバスを降りると、えちぜん鉄道乗り継ぎで「永平寺口」。
また駅前からバスが永平寺までといった具合で、永平寺から福井駅行きのノンストップバスがアンカーだ。


えちぜん鉄道は一両編成

さて東尋坊。
シベリアからの強い風、日本海の凍る冷気を覚悟し重装備できたが、無風。
気温零度というが、陽光もあり辛くはなかった。
岸壁から見下ろす日本海、のこぎりの刃のような柱状節理の迫力。
おごそかな自然の舞台を前に己の小ささを思い知らされる。
さて、ここまで来たらやはり名物を食べねば落ちつかない。
バス停までの沿道には越前ガニの店がずらり。
そのうちの一軒、「やまに水産」のウニ付きのカニ丼を平らげる。
柔らかな身がごはんに絡みつくようにしなやかだ。


眺めは抜群 東尋坊

定番のカニ丼

東尋坊からバスと電車で二時間。
雪のない穏やかな東尋坊から一転、まだ厳寒の永平寺へ。
ピンと張りつめる痛いほどの空気が、修行の緊張感と音を立ててぶつかり合う。
修行僧の日常を間近に感じられるのがこの寺の魅力。
僧侶の近くで読経を聞き、見学コースの廊下で荷物を持った修行僧とすれ違う。
東司(トイレ)、浴室、台所など修行の場を観光客も間近に触れる一体感が、山間に別世界を創り出している。


永平寺

まだ春は遠い永平寺

門前にて越前そばとごま豆腐を食べ、バスで福井へ。
関西から日帰りでも、あわら温泉あたりで一泊しても自由にデッサンできる日本海の旅。
カニと雪が奏でる冬のシンフォニーも悪くはない。