「西村晃のマーケティングの達人 大繁盛の法則」企業経営・売上アップのヒントを提供

西村晃の路地を曲がれば、もう旅人

第12回 3月 「春の風に誘われて神楽坂から外堀の桜見物へ」

東京の飯田橋には国鉄時代貨物の基地があった。
ここは中央線、総武線という東西からの鉄道の要でもあり、また神田川と日本橋川が交わる水運の結節点でもあった。
人とモノが集まる神楽坂が明治以降東京でも指折りの繁華街となった理由がここにある。
ただ、便利な地域だけに地上げなどの再開発の嵐もたびたび押し寄せた。
料亭の存続をテーマにした「拝啓、父上様」というテレビドラマが人気となり、それ以来この街を歩く人がさらに増えた。
神楽坂、地蔵坂、袖擦坂と坂が多い地域だ。
また本多横丁、芸者新道、かくれんぼ横丁など迷路のような石畳の小路があり、まるで隠れ家のように料亭やレストランが散在する。
とても一度の訪問では行きつくせない懐の深さがこの街の魅力といえる。


小路が多い神楽坂

このあたりを「牛込」というのは文字通り牧場があったことによる。
群馬県の赤城山の麓にいた大胡氏という戦国武将が北条氏の家臣となり、このあたりを領有して地名にちなみ牛込氏と改名した。
故郷から移して造営したのが地下鉄神楽坂駅近くにある赤城神社、地域の守り神だ。
江戸時代は武家屋敷が並んだこの地域、牛込見附を造営したのが阿波徳島藩の蜂須賀氏だったことからいまでも夏の神楽坂まつりでは阿波踊り大会が催されている。


隈研吾氏デザインの赤城神社

牛込見附のほとりにある「カナルカフェ」は、堀に面したオープンテラス。
堀の向こうを行きかう電車を見ながらコーヒーを飲み、読書でもすれば様になる。
桜の季節は、格好の花見場所としてファンが多い。


カナルカフェでの一休みは気持ちがいい


外堀は桜の名所でもある(昨年撮影)

ここから市ヶ谷、四谷、赤坂へと続く江戸城外堀は、寛永13年(1636年)に三代将軍徳川家光の命により東国の大名36家が分担して開削された。
牛込付近は神田川から伸びる谷筋を利用してつくられている。
また東京メトロ南北線市ヶ谷駅構内には、出土した外堀の遺跡と関係資料が展示されており、興味深い。
牛込から先、水道橋方向は神田川、その先には隅田川があり堀の延長にある川が江戸城を守っていたことがわかる。


南北線市ヶ谷駅構内の史跡コーナー

また反対の四谷見附、赤坂見附から先には、実は堀の延長に巨大な池があった。
交差点や地下鉄駅名で残る「溜池」だ。
かなりきれいな水で玉川上水ができるまでは江戸の生活水としても利用されたという。
赤坂から現在の溜池交差点にいたるまで外堀通りが緩やかに蛇行しながらも道路沿いが平坦なのは、池を埋め立てた名残である。
その先「虎ノ門」の地下鉄駅構内と、文部科学省の敷地内には出土した外堀の石垣が見学できるように保存されている。

歴史の上にいまの東京が作られていることが実感できる。


赤坂見附の跡