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第21回 12月 都会に残る「田園」のなごりをたどる

喧噪の渋谷が近くなのに目黒区駒場はいまも静けさを維持している。

今回は都会に残る田園の名残りを見に行く。
井の頭線で渋谷から各駅停車でふた駅、「駒場東大前」は東京大学のキャンパスに直結する。


駅から直結の東大キャンパス正門

敷地内には誰でも入ることができる。
明治初め、政府は勧農政策推進のため機械化農業の技術者を海外から招き、江戸幕府の鷹場、駒場野の約6万坪を開拓、「駒場農学校」を創立した。
その後東京大学農学部となるが、本郷にあった旧制第一高等学校と校地を交換。
新制大学移行後は東京大学教養学部のキャンパスとなる。

正門を入り右手に進むと、かつてあった一高の学生寮の記念碑が残りその周囲は近代的な図書館や食堂などに変貌している。
さらにその奥のこんもりとした木々の中に池がある。
本郷キャンパスの三四郎池にならい、学生の間で「一二郎(浪)池」と呼ばれる。
この池には「入学前に一人で見ると浪人する」や「入学後に一人で見ると留年する」などといったジンクスがあるとか。


東大キャンパス内の「一二郎池」

正門まで戻り反対方向へ。
お洒落なフレンチレストランが建つ。
静かな雰囲気が学内関係者はもちろん地元の人たちにも人気、散歩の途中に立ち寄りたい。


学内にあるお洒落なレストラン

キャンパスを出て、踏切を渡ると「駒場野公園」だ。
「駒場農学校」に赴任したドイツ人ケルネル氏は土壌や肥料の研究で大きな成果をあげた。
現在も公園内に農学発祥の地「ケルネル田んぼ」が残り、近くの筑波大学付属駒場中・高校の生徒によって田植えや稲刈りが行われる。


駒場野公園の「ケルネル田んぼ」

そこから歩いて5分、「日本民藝館」がある。
「美の生活化」を目指す民藝運動の本拠として、柳宗悦らにより開設された。
特徴ある木造建築の館は博物館として一般に公開されている。


「日本民藝館」

民藝館の裏手が「駒場公園」だ。
駒場農学校移転後の跡地を第一高等学校、東京教育大学農学部とともに加賀百万石(今の石川県)の当主だった旧前田家の前田利為侯爵が邸宅として分割使用したが、その邸宅跡が目黒区管理の公園となる。
化粧レンガやタイル張りがほどこされた洋館と書院づくりの和館は昭和初期に完成した。
和館はロンドン駐在武官であった侯爵が外人客接待用に建てたという。


駒場公園内の 前田侯爵 旧宅

第二次大戦中に前田侯爵は亡くなり、終戦とともに占領軍が接収、連合軍司令官の官邸などとして使われた。
自然の木々と名石をあしらった奥庭を和室から眺めたり、芝生の広場で休息すると、近くにあの喧騒の街があることなど忘れてしまう。